これまで色んなところで何度となく書いてますが、新潟県・佐渡にてお米を育てている両親は、自家消費分として餅米も育てており、さらにそれを使って「かき餅」をつくっています。(去年のブログはこちら)
わたしは世界中の農家を尊敬してますが、その理由の一つは、食べ物に真剣で本気である姿勢です。販売する目的であれば当然ともいえるのかもしれないけど、でもわたしが知っている農家の多くは、自家消費用、つまり販売しない食べ物も本気な人ばかり。
自分の米と大豆で味噌にしたり、大豆と小麦を麹にして醤油を仕込んだり、嬉々として取り組む農家さんたち。誰よりも忙しいはずなのにそれでも目をキラキラさせながら麹室にこもったりしていて、その姿はたくましいとか力強いというよりも、愛おしいものがある。
我が母たちも、真冬の寒いときに何度も餅米でお餅を作り「今年はおいしい」と毎年言うので、かわいいなと思います。そして大量に送ってくれる餅は、毎年うなるほどにうまい。言葉をなくすほどにうまい。生きる力の塊みたいなお餅。
そのお餅をスライスして1ヶ月ほど乾燥させると、カチカチの板状のお餅みたいのができ、油で揚げると、見慣れたおかきになる。
これが我が家の、特製おかき。

なんに対しても「ぜんぶ同じではつまらない」とよく言う母は、お餅にする時点でいろんな食材を練りこみ、おかきもカラフルにフレーバリングを施しています。毎年の定番が数種類と、その年の新作食材が数種類。さすが元ハンドメイド作家で子どもを二人育てただけあり、彼女の独創的なクリエイティビティが発揮されていることを、毎年リスペクトしています。
2021年のラインナップはこんな感じでした。

佐渡は海のものの山のものもおいしく育つので、海藻のアオサやナガモ、落花生や黒豆などは毎年安定のおいしさ。ある年、沖縄からいただいた黒糖がたくさんあってお餅に入れてみたところ大ヒットした黒糖は、わたし個人的には永遠の#1フレーバーでもあります。
さらに今年は、母たちの畑でよく育ったかぼちゃと、冷凍保存されていた枝豆が加わり、どちらも相当絶品です。枝豆はしっかり豆の味も残り、いやはや恐れ入りましたとばかりのおいしさでした。おいしいもの同士がくっつくと、足し算よりも掛け算となって広がるのだと実感します。
ちなみに「油で揚げる」ことに苦手意識をもってるお友だちも多いので念のために書きますが、このおかきの場合、フライパンに1cmくらいの油を引く感じでつくれます。(もちろんたっぷりの油で揚げるのも最高です)
あまり高温だと焦げやすいので、中火くらいでカリッとサクッと仕上げるのがおすすめ。熱した油の中に入れると、しゅわしゅわと空気の泡を出しながらおかきは大きくなり、全体的に箸先から硬く感じられる頃には空気の泡も小さくなってるはず。
あと、表面に油を塗ってオーブンで焼く、という方法もできます。


焼きの場合180度20分くらいが目安でしょうか。この場合、それほど油が染み込まないので、大きさもさほど広がらず、食感も硬めのおかきに仕上がります。
個人的には揚げる方が好きですが、それでも焼く方法なら良いごま油を使ったり、忙しい時はオーブンに入れて別のことができるというメリットもあるので焼きを選ぶときもあります。
あと、わたしはプレーンで食べることが多いけど、仕上げにお好みで塩や胡椒やカレーなどを掛けたり、あと、お味噌汁に入れてお煎餅汁みたいにするなど、いろんな楽しみ方もできます。
特製おかきは今年も、お米を年間購入してくれている方や、この時期のお礼やご挨拶としてお送りしました。みんなのお家で、おいしく食べてくれているといいな。

実は母と義父はこの春、販売用の田んぼが使用できないため大幅な田んぼ仕舞いを決意しました。そうなると餅米もこれがラスト。うなるほどおいしいお餅も、揚げたて最高のおかきもラスト。
20年以上も家族やわたしの体を生かしてくれたお米の田んぼ、また、ここ数年は夫と一緒に稲刈り要員になっていた田んぼがなくなるのは、まだうまく言葉にできないような寂しさがあるけど、私たち以上に残念に感じているのは母と義父。彼らが決めたことなら心から支援し、この先また、新しい人生の楽しみを追求してくれることを願っています。
最後までおいしくいただくと決めた、今年のお米とおかき。
しみるぜ。

ちなみに。
↓1ヶ月間乾燥させてる間の写真を撮ってもらいました(なぜか日が落ちて暗くなってから撮影した母。これだけ見ると軽く呪いっぽさがあるけど、決してそんなことはないのでご安心を)
それにしてもこうして干してるところを見ると、確かにぜんぶ同じ色よりも、明るくカラフルにしたくなる気持ちもわかるのは、母からのDNAなのかもしれない。

投稿者プロフィール
- 柳澤 円(やなぎさわまどか)▷ライター/ 編集/ 翻訳マネジメント。主な執筆分野は食・農・環境問題・暮らし▷10代後半から留学を含む海外生活を続け23歳で帰国。英会話スクールの運営に携わったのち都内のコンサル企業に転職。ナショナルクライアントを担当する充実の日々も2011年3月東日本大震災で価値観が一変し、より自然に近い暮らしへと段階的にシフトする。現在は夫・史樹と共に、横浜から神奈川県内の中山間地へ移り、取材や執筆、編集の傍ら、自家菜園を中心とした自然食と手仕事に勤しむ日々。愛猫の名前はきび。
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