すべてを忘れるニンゲンという下等な生きもの

今日9月1日はご存じのとおり「防災の日」である。

関東大震災は1923(大正12)年9月1日午前11時58分に発生した、神奈川県西部を震源として起こったM7.9(推定)の大地震だ。

震度7~6強の激しい揺れが南関東を中心に襲い、死者・行方不明者約105,000人という騒動のさなか、多くの朝鮮人が武装蜂起するとか、井戸に毒を入れたとかいうデマで虐殺されるという人災まで招いた。

6,000人ともいわれる朝鮮人がデマにより虐殺されたとされ、毎年行われていた追悼式によせる東京都知事の追悼文は、2017年より小池百合子都知事により中止されている。


奇しくも今日がその100年目という大きな節目だとは知らなかったが、ネットで「関東大震災があったこと自体を知っている人は約50%」と書かれているのを発見し驚いた。

しかし同時に「人なんてそういうもんだろうな」と思う自分もいる。

その後390万ともいわれる戦没者をうんだ太平洋戦争や、広島長崎の原爆はもちろん、つい12年前にあった東日本大震災だって忘れるんだから。

出典:BCC

あのとき起きた福島原発事故で溶解した核燃料を、未だに耳かき一杯採ることすら難航していること、それを冷やした水を、安全だといいながら沖合に流すということに対しても大きな混乱も批判も起きないのは、忘れているからということが大きいのだろう。

8年経ってようやく撮影だけできた溶けた核燃料「デブリ」。今も人が近づけない高線量の放射能を出し続ける。出典:東京電力

もちろん辛すぎる出来事について、忘れることで自分の精神を守るという本能もあるし、私だって小さな諸事忘れまくりだから、偉そうなことはそんなに言えないんだけども、人間とは結局その程度の下等な生きものなんだと思う。

ところでそんなことを思いつつ、私はいま、カバー画像にある、先日のSUPフィッシングで使用したライフジャケット(以下ライジャケ)を手にしている。

ライジャケとはご存じのとおり、船などに乗るときに首からかけたり腰に巻いたりする「浮き袋」である。
通常は小さく畳まれており、水に入るとその浮き袋が膨らんで浮くことができるため、釣りやSUPなどのウォータースポーツでは着用が義務付けられている。

自動式と手動式があるが、自動式は水に落ちるとセンサーにより小さなガスボンベが勢いよく空気を吹き出し、浮き袋を膨らませる便利なものだ。

しかしそれを購入したときによく調べなかったバカな私は、作動はレバーを引くのだとばかり思い、先日そのまま海に入ってしまい、その瞬間「ボシュー!」という音と共に作動したことにとてもビックリした。


しかしさらにビックリしたのは、なぜか浮き袋が膨らまなかったことだ。

「緊急時にライジャケ膨らまなかったら終わりじゃないか」

今手にしているのは、その原因を解明しなければならないと思ったためで、なにも防災の日だからというわけではなく全くの偶然なのだが、そこで私は驚愕の事実を発見した。

「マジでどうなってんのこれ?」

市販されているライジャケは、商品の特性上、安全の基準がかなり厳しく設定されており、構造や規格も統一されている。


私の買った自動式は、この写真のように小さなガスボンベが装着されており、右側にあるキャップの中にあるセンサーが水を感じると自動的にボンベに穴があき浮き袋が膨らむという構造のもの。


もしセンサーが作動しなくてもこの紐を引けば同様にボンベに穴が空き空気が入るようになっている。

こうした構造のため、1回使ったらボンベと右側のセンサーを交換しなくてはならないし、一応ガスが抜けたときのために予備を購入したほうがよいなどと書かれている。

しかしまず第一の問題が発覚した。取り外せるはずの右側のセンサーのキャップが、どうにもこうにも外れない。

「これじゃ1回しか使えないじゃないか?!それともこういうものなの?」

と念のため調べてみたら、やはり違う。定期的にこのセンサーを交換して使えるものだと書かれている。

なんなんだよこのメーカーよ…と思いつつ各所を調べたところ、さらに驚くべき事実を発見した。

ライジャケには再度の使用や自己点検のため、反対側には口で息を吹き込むチューブがあるのだが、このチューブがバリバリに裂けているではないか。

それだけではない。浮き袋にあたる気室とこのチューブの接着がまったくできておらず、ここから空気がダダ漏れ。これじゃ膨らむワケないわな…

この「CE」マークはEU(欧州連合地域)で販売される指定製品に貼付を義務付けられる安全マークらしいけども…

さらにビックリな発見

とはいえ「もしかしたら一回膨らんだときに壊れちゃったのかもしれない。古いしな…」と思う善良な消費者の私(笑)は、妻のためともう一つ予備で買った同じライジャケを物置きから出してきて点検してみることにした。

すると、使ったやつと全く同じように、右のセンサーのキャップは固すぎて全く外れる気配なし。
またチューブから吹き込んでみたところ、裂けてこそいないものの、根本の接着が全然できておらず、空気がスースーと抜けるではないか…泣

吸排気チューブ機能せず。

でも今日はなんといっても「防災の日」だから。


ちなみにこのライジャケの購入した楽天の履歴を辿ってみたら、まだバリバリ安全完璧!な宣伝文句を掲載しそこそこの値段で売っている。
見るとメーカーは中国製とはいえ、日本のある会社が代理店としてかなり人気のようだ。

もう8年も前のだし、新しいのを買うかという考えも浮かんだのだが、いくら古くても未使用でこれはまずくないか…と考えたすえ、その代理店に一部始終を書いたメールを送ることにした。

「もちろんとっくに保証期間が過ぎているのは存じ上げていますし、交換してくれとはいわないが、生命を担保する商品なだけに、これは一度確認をお願いします」的な、極めて丁寧な文言でね。

さっきメールをしたばかりなんで、まだそのメーカーから返事は来ていないけど、果たして来るか来ないか??

私はあくまでもこの商品の特性上、なにかあってからでは遅いと、そのメーカーに対しての警鐘にしてほしいと祈る気持ちの方が強い。だからこそあえてこのブログで書くことにした。
ああ、なんて善良な消費者なんだろう私。

まあ来ないとしたらそれだけの会社だということだし、そうした場合、メーカーや会社の名前を晒したくなるけど、それも大々的にやるつもりはない。

しかし何度も書くように、全くの未使用でこれはシャレにならない欠陥だと思うので、どこかで書き込むと思うし、メーカー名は聞かれたら答えるつもりだけどね。

そしていま、本当に偶然のことながら、このライジャケを確認点検した今日は100年目の防災の日だったことに驚きを隠せない。
 
みなさん、ライジャケをはじめとする防災用品なんて、ほぼ使わないものだし、使わないに越したことはないけれど、マジで点検したほうがいいですよ。
 
その事実を前に、「結局のところなんだかんだと言っても自分の身は自分で守らねばならないのだぞ」と、天が教えてくれたと感謝しつつ、丁寧なメールが来ることを願っているイマココである。


投稿者プロフィール

柳澤史樹
株式会社 Two Doors 代表社員。
一般社団法人 自分史活用推進協議会認定 自分史活用アドバイザー。
企業研修プログラム「マインドフルカフェ」メンバー。
ライター・編集・プランナーとしても活動中。