2021年に発売された書籍『認知症世界の歩き方』をご存知でしょうか?本の筆者はさまざまな社会課題の解決にデザインの力をいかすissue+design代表でデザイナーの筧裕介さんです。

筧さんは、約100名の認知症のある方々とじっくりと向き合い、当事者の方々が見ている世界を分析され、非当事者にもわかりやすいイメージで描いてくれました。それを「認知症世界」と命名し、非当事者もその世界を追体験できるようなかたちで読み進めらえる一冊です。

発行部数は18万部を超え、翻訳本も発売されるなど、ベストセラーとなりました。

2023年には実践編として、続編にあたる書籍『認知症世界の歩き方 実践編』が発売になりました。先の本で、ある程度グルーピングされた認知症における各症状に対して、どんな原因によって何が起こっているのかをより具体的にイメージしたり、実際の事例を元に、よりベターな対応を考えることができるつくりになっています。

先の本を読んでいない場合も最後まで問題なく読み進められそうなつくりで、すごく親切だと思いました。

2018年に亡くなった義父が5年間ほど認知症でしたが、ページをめくりながら、「お義父さんもあの時きっとこういう風に見えてたんだなぁ、不安だったろうなぁ」なんて思う箇所がけっこうあって、個人的には涙腺を潤ませながら読みました。

認知症が身近な人もそうでない人も、多くの方におすすめです。

『実践編』発売記念トークイベントを取材

実践編の発売時には、認知症世界をより深く知るためのワークショップとイベントが開催され、ありがたいことに取材を担当させていただきました。

会場満席。各グループともに議論はとても盛り上がっていました。
issue+designさんではオンラインを含めて定期的に「認知症世界の歩き方ワークショップ」の開催と、この認知症世界を広める公認ファシリテーターの養成講座も開催されています。

この日のゲストは、在宅医療の啓蒙や取り組みを実践する医師の佐々木淳さん。講演のほか、佐々木医師と筧さんのトークセッションも開催されました。

(佐々木医師(左)と筧さん(右))

さすが普段から現場を見ている佐々木医師のお話は説得力がありました。
80代を過ぎたら認知症を医療だけでケアするのではなく、老いて弱るというごく当たり前の老化だと認識しよう、というお話は本当にその通りだと思います。

「大切なことは国民側のリテラシーを変えること」という佐々木医師と筧さんのトークセッションの様子は、issue+designさんのウェブサイトでご覧いただけますのでぜひ。

投稿者プロフィール

柳澤円
柳澤 円(やなぎさわまどか)
ライター/コピーライティング/翻訳マネジメント
社会課題と暮らしのつながりを取材し、複数媒体にて執筆。主な関心領域は食・農・環境・ジェンダー・デモクラシー・映画。企業の制作物なども実績多数。
10代からの留学を含む海外生活後、都内のコンサルタント企業でナショナルクライアントの発信を担当。多忙ながら充実の日々は2011年3月に東日本大震災を経験したことで一変、兼ねてより願っていた自然に近い暮らしへと段階的にシフトする。神奈川県内の中山間地へ移り、フリーランスライターを経て2019年、夫・史樹と共に株式会社TwoDoors設立、代表就任。取材執筆のかたわらで自家菜園と季節の手仕事など、環境負荷の少ない暮らしを実践する。書き手として、心の機微に気づく感性でい続けることを願い、愛猫の名はきび。