かなり久しぶりの更新になってしまった。よく「ブログは毎日でも更新すべき」と言われるが、言い訳を抜きにしても、言葉を生業にする以上は、時間を使っても読んでもらいたいことを伝えたいこと以外はなかなか書けない。
 
しかし私と妻は映画が大好きで、映画評ならモチベーションが高いときは書けるので、最近観た数本を紹介することにした。
 
昨年は初めて年間100本の映画鑑賞をクリアすることができたのだが、ジャンルはある程度決まっているなとようやく感じるようになった。
 二人が共通して好きなのはミュージカルも含めた音楽がテーマの映画、社会派(戦争もの含む)、ドキュメンタリー、そしてこれまであまり観なかったけど「リメンバー・ミー」から我が家で最近急上昇のピクサー。

ただしそれも細かくチェック項目があって、例えば戦争ものといっても、ただのプロバガンダムービーとかは嫌いだし、ピクサーだってCGよりもストーリー重視。そしてホラーは一人で観る(笑)。
ホラーの場合はあえてB級を楽しんだりするファンもいるし、それも理解できるけども、外したときの虚無感がハンパないので、そこまでの勇気がないタイプ。
 
つくづく面倒くさい映画ファンなのだが、それでも付き合ってもいい、こんな主観的な映画評を観る前に参考にしてもいい、という心優しい方は今後このタイトルで不定期に書いていこうと思うので、ぜひ付き合ってほしい。

1本目「ミッドサマー」

珍しく、批評家たちが絶賛、北欧好きにものすごく話題になった反面、途中退席も続出して議論を呼んだ話題作ということで、珍しく妻もチャレンジしたのが、スウェーデンの夏至祭を舞台にした同作。
主演のフローレンスピューがこの映画で大ブレイクし、一躍スター女優になったということも期待が高まった。

アメリカに住む大学生のダニーが、恋人クリスチャンや友人らと出かけたスウェーデンの奥地にある村の夏至祭で遭遇するおぞましい物語、というあらすじ。

感想「観たことを記憶から消したい」

エグさやグロさ、カルト好きは大好物でしょうが、そもそもその世界観が苦手。俺なら木刀もってなぎ倒したくなる。
演出や脚本にしてもツメの甘さが目立ってどうにもダメ。
しかしこれを名だたる批評家が絶賛し、世界で熱狂的なファンがいるということを知り「私の面倒くささなんてかわいいもんなんだ、一般人で十分だわ」と思わせてくれたのがこの作品の価値でしょうか。


2本目「Tenet」 

現在話題沸騰で公開中のクリストファー・ノーラン監督の話題作。
「ダークナイト」シリーズや「インターステラー」「ダンケルク」など、これもまた話題を呼ぶ「時間」をテーマにした数々の作品を送り出した巨匠で、予告からして最高に期待感が高かった。
某映画サイトでは9月公開の作品中期待度No.1だそうだ。

すべてCGなし、制作費は200億円とも言われる「これぞハリウッド!」

感想:
「謎ときと、ガチでド派手な映像好きにはたまらんだろうけども、私はこれをしたり顔で『深いなあ』とかいわないし、二回は絶対に観ない(笑)」。

主役のジョン・デイビット・ワシントン(デンゼル・ワシントンの息子)はたしかにいい感じだけど、悪役もしょぼいし、女優さんもふうーんだし。
これ、おそらく原作を隅から隅まで何度も読まないと、映画だけではあまりにも「?」が多すぎる。謎ときの面白さと以前の前提条件を映画で表現するのは無理がありすぎ。そもそもツッコミどころが多すぎて謎ときのモチベーションすら沸かない。でも映像は確かにすごい、かな。

まあ、制作費200億円かけて自分の世界観を世界中に押し付け、よくも悪くもこうして話題にさせちゃうという意味で、たしかにノーラン監督は「凄い」ですわ(オレ性格悪いなあ)

3本目「CURED」

2017年アイルランド・フランス合作で制作された「ゾンビ的な」映画。
新人のデヴィッド・フレインが監督・脚本。
メイズ・ウィルスと呼ばれる新種のウィルスに侵されたなかで、人々はゾンビのように人を食い殺すが、死者が蘇るゾンビではない。
「ゾンビ的」と書いたのはそこから。
75%は薬によって「回復」するが、回復してもその記憶は消せない。
そして社会復帰するものの…というあらすじ。

考えさせられるわあ…

感想「この監督の才能に唸る。今後もフォローしたい期待感」

まず、これまで数限りなく人を魅了し、もはや「ジャンル」ともいえるゾンビものでありながらゾンビでない、あくまでも「ゾンビ的」という切り口がまず素晴らしい。
75%は回復するが、その記憶が消せずに毎夜恐ろしいPTSDに苦しむ回復者が、健常者の社会からどのような扱いを受けるのか。

まさにタイムリーすぎて恐ろしいほどの先見の明を感じるテーマ設定とリアリティがグイグイと物語へ引き込んでいき、あっという間に1時間半が経ってしまった。
演技もうまいし、アイルランドという舞台設定が好みというのもあるかもしれないけども。

さらにいえば、前述のtenetが200億を超える予算で作られているのに対し、おそらく10分の1くらいじゃないかと思われるのに、これだけ観たあとに考えさせられるのは、ひとえに脚本の妙だろう。

同作についてデヴィット監督はこう語る。

『CURED キュアード』は恐怖についての話だ。感染した者の恐怖や感染する恐怖だけではない。自分の中にある恐怖、すなわちそれは恐怖に苛まれる中での自分たちの無力さによる恐怖なのだ。

http://www.cured-movie.jp/

このコメントを映画を観たあとにチェックして「まさにそのとおりだよデイビットくん!!」と唸らされた(なんとも上から目線)。
新型コロナウィルスがこれだけ蔓延するなか、あまりにド直球で目をそむけたくなる人もいるかもしれないが、この作品で描かれているのはウィルスそのものではない。
ウィルスだけではなく、政治を根源とする社会の劣化と、それに伴い人々のなかに蔓延しているのはまさに「恐怖」以外のなにものでもない。
そう感じている私にとって、こうした作品をもって警鐘を鳴らす監督のセンスに脱帽だ。

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今回このブログを書いてみて、私は極めて一般的な映画評をする人間だなと感じた。

もちろん映画だから、水も漏らさずような脚本である必要はないと思いつつも、そのツッコミどころが多すぎると、ストーリーを楽しめなくなってしまうのだ。
しかもそこには相対的な映画製作というプロジェクトの現実をも投影するので「こんだけの制作費をかけりゃそりゃ凄いものは撮れるでしょうけど、それよりもこの低予算で人の記憶にしっかりと残るか、または鑑賞したあとに議論を呼ぶものこそ凄い」と思うタイプだ。

だからその意味では今日紹介した3本のうち、最下位は「tenet」になっちゃうんだけども、それでも私のような人間にブログに書かせ、賛否含めて話題になるということだけでも凄い作品であることには変わりないのだ。


さらに加えて生意気を言わせてもらえば、映画とはまさしく社会の縮図だなあと感じる。
 
ここで紹介した各作品の批評はあくまでも私の主観であり、これと違う意見をもつ人を決して否定しているわけではない。
映画のジャンルや観方は、人によって全く違うものだし、それは決して押し付けるようなものではないと思うからだ。

しかしそれこそが、多様性を受け入れたうえで、それぞれが個人としての意見をもち議論を重ねることで、文化や社会というものは成熟して醸成されていくものだと思っている。

肯定否定の如何を問わず、私のテイストを気に入ってくれた人はまた遊びに来てやってください。みなさんの予想以上に私は嬉しいです(笑)

投稿者プロフィール

柳澤史樹
株式会社 Two Doors 代表社員。
一般社団法人 自分史活用推進協議会認定 自分史活用アドバイザー。
企業研修プログラム「マインドフルカフェ」メンバー。
ライター・編集・プランナーとしても活動中。