季節のめぐりは心が躍る。
特に夏の暑さが落ち着く頃、梨やブドウを見かけるようになると、もうすぐ再会できる旬の味を思い出し、気持ちも明るく、未来が楽しみになってくる。
いちじく、柿、かぼちゃ、さつまいも、りんご、松茸、れんこん、おおまさり、新米、そして、栗。
「今年もまた会えたね」と呟くことが続く。秋は本当にあっという間に過ぎ去ってしまうからこそ、毎年逃さずにいたいのです。
あの栗の味を。
正しくは、あの栗のケーキの味を。
こちらは東京・港区の洋菓子店「グーテ・ド・ママン」のモンブラン。驚くべきことに、ふかした和栗を全て手作業で作るマロンクリームです。さらにケーキの中には、渋皮煮入り。渋皮煮ですよ?あの、一度作ってみたらかなりの確率で「もう一生やりたくない」と言い出す人が多いほど工程が多く、でもとんでもなくおいしいことでおなじみの、あの渋皮煮。
想像が及ばないほど手間が掛かり、故に、信じられない程おいしいモンブランです。

私たち夫婦は、12年前の結婚式で「グーテ・ド・ママン」さんにウェディングケーキを作っていただいた果報者です。
「ウェディングケーキはカップケーキが良い。パサパサしてなくて、バタークリームでもない、おいしいケーキが良い」という私のわがままイメージを聞いた夫・史樹は、料理家の澤田 美奈先生に「どこか良いケーキ屋さん知りませんか?」と相談。
優しい性格に加えて情報量が半端ない美奈先生が教えてくれたお店が「グーテ・ド・ママン」でした。ご相談にうかがうと、オーナーパティシエの三富恵子さんはご快諾くださり、以降は全てメールのみ。三富さんの対応はいつも的確で、丁寧で、でも力強くて、おまかせできる安心感に包まれたことを覚えています。
「ラブリー過ぎないシンプルなものが好きです」と簡単なイメージだけでしたが、ウェディング当日、会場の横浜ロイヤルウィングには私たちの想像と期待を大きく上回る、最高のカップケーキが届きました。

どうです、この見事なカップケーキ。
ふわふわのおいしいスポンジが透明カップの中に収まり、ランダムに乗ったかわいいカットフルーツやアルファベット。文字通り、一生に一度しか味わえない、思い出の味です。(いや本音を言えばもう一度、過去に戻って1個だけでも食べたい。せめて半分、いや、一口だけでもいいから、食べたい…!)
ちなみに数年後、偶然聞かされた余談をひとつ。
ドレス、タキシード、会場音楽、引き出物、そしてケーキまで自分たちで持ち込み、ブライドメイズとグルームスメンが各5名という特異なオペレーションの挙式をしたのは、ロイヤルウィングで「前代未聞だった」そう。そんなことは全く感じさせない穏やかな笑顔ですべてを快諾してくださったプランナーさんに感謝しかありません。おかげでこうして、100を超える数のカップケーキも無事に、各人の口福となりました。
というわけで10月1日、つまり秋になると私たちは結婚記念日がやってくる。お祝いのケーキといえば、「グーテ・ド・ママン」しかありません。


他にもフィナンシェやクッキーなど焼き菓子も最高です。つい「食べたいけど、食べたら無くなっちゃう。困った」と、支離滅裂になるほどのおいしさをどうか、お見逃しなく。(激推し)
お店の場所は、三田か田町駅、あるいは白金高輪や麻布十番の駅から徒歩約10分。秋が終わる前にぜひ、あの栗を。
グーテ・ド・ママン
(東京都港区三田2-17-29 グランデ三田1F)
投稿者プロフィール
- 柳澤 円(やなぎさわまどか)▷ライター/ 編集/ 翻訳マネジメント。主な執筆分野は食・農・環境問題・暮らし▷10代後半から留学を含む海外生活を続け23歳で帰国。英会話スクールの運営に携わったのち都内のコンサル企業に転職。ナショナルクライアントを担当する充実の日々も2011年3月東日本大震災で価値観が一変し、より自然に近い暮らしへと段階的にシフトする。現在は夫・史樹と共に、横浜から神奈川県内の中山間地へ移り、取材や執筆、編集の傍ら、自家菜園を中心とした自然食と手仕事に勤しむ日々。愛猫の名前はきび。
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