ずいぶん前のことだけど、「腰兵糧(こしびょうろう)」という言葉に出会った
その意味は兵士たちが腰に携帯していた食料のことで、夫に借りた歴史小説に出てきたものだ。戦国時代の武士たちは、乾燥させたご飯や煎った玄米を携えて、空腹をしのいでいたらしい。


え…これ、私じゃん。

当時、会社勤めだった私は、朝6時半に朝食を食べても、9時の始業時間にはすでにお腹が空いていた。

仕事はそれなりに忙しかったので昼食のタイミングがずれることも多かったし、仮にちゃんと正午に食べたとしても終業の18時前には確実にお腹が空いている。また、22時を回るような残業も多かったので、それはまぁ1日のうち何度も食べ物のことを考えていた始末。

若かりし頃はどっっっぷりジャンク食生活もしていたが、ナチュラリストの母に育てられた自然食育ち。30を超えた時にはすっかり母と同じような食習慣に戻ってもいた。
そのため、会社のデスクでパソコン見ながら食べるコンビニのパンとサラダ(に救われたことは何度もあるのでぜったいに否定はしないけど)を日常習慣にしたいとは思えなかった。

そこで試行錯誤の上にたどり着いたのは、会社に到着したらりんごかバナナ、夕方はマグカップに味噌を溶かした味噌湯、夜食にお芋かブロッコリーか人参なんぞをかじる。
また、バッグに持ち歩いていたのはナッツやドライフルーツ、玄米をオーブンで焼いた炒り玄米、その大豆バージョンである炒り豆をつまんで空腹をしのぐようになっていた。


さながら現代の腰兵糧である。


退職してフリーランスになっても、うまく食事が調整できなかったりすることもあり、今も大抵リュックには腰兵糧を忍ばせていて、最近のブームは「炒り豆」だ。

きっかけはお世話になってる農家さんのひとり、仲吉京子さんが手塩にかけた自然栽培大豆でつくっている「煎り豆」だった。ちょうどいい香ばしさと歯ごたえと、ずっと噛んでいたい旨味でめちゃくちゃ絶品の味!あっという間に食べちゃったけど、品切れで買えず自宅再現にチャレンジすることにしたのだった。(普段は京子さんが出店するマルシェなどで買えます)

そして、わたしの炒り豆の腰兵糧についてツイートしたら、想像以上にいろんな方がコメントをくれて、腰兵糧(とはさすがに書かなかったよ、司馬遼太郎ファンでもない限り通じないから笑)仲間は多いことを知る。

オーブンを使うので厳密にいえばわたしのは炒り豆というよりも「焼き豆」な気もするし、基本的に自分用は実験も兼ねてざっくりしてるけど、直近のつくり方はこんな感じ。

炒り豆のつくりかた

  1. 乾燥大豆 200〜250g位をよく洗う。
  2. ボウルに1と、お湯800ml位を入れて1時間ほど浸す。
  3. オーブンを120度に余熱開始(ウチは電気なのでこれくらいだけどガスオーブンなら110度とかかな。乾燥が目的なので低温でOK)
  4. 豆のお湯を切りオーブンシートを敷いた天板に広げて30分焼く。途中で天板をゆすったりして全体的に満遍なく。
  5. 続いてオーブンを190度(ガスなら180かな)に上げて30分。ここでも満遍なく。仕上がりを食べてみて足りなかったらさらに5分。熱いうちに塩をふる。


(照明めっちゃ反射してるけど)お湯につけてる時の様子。割と早くから皮がはじけつつ豆が柔らかく&大きくなる。ちなみに大豆は綺麗に見えても埃っぽかったりするので、たっぷりの水で両手でもみ洗いを数回してます。




私は味噌や納豆のために普段からたくさんあるのが大豆だけど、ひよこ豆とか、住んでるところで手に入りやすいお豆で同じようなのがつくれそう。

また、同じ大豆でも品種やつくり手によって味が違うので、その食べ比べも好き。ちなみに写真の炒り豆は、お味噌を仕込んだ残りで、さといらずという在来品種。毎年、福井のマルカワみそで買ってます。


気づかぬうちにAmazonでもマルカワみそが買えるようになってる!(元サイトの方が商品種類は多いけど)ちなみにこの↑セットはお味噌仕込み用の計量済みなので大豆の余りはなしですね。


大豆を戻してる写真のザルは最近のお気に入り↑米粒より細いスリットのザル。近いうちにキッチンも大人っぽい色にDIYする予定なので、シックなグレイをチョイスした次第。
 

ところで腰兵糧は、天災など急な被災とか、誰かお腹を空かせて倒れそうな人に出くわしたとき等々、なんらかの緊急時の対策にもいいと思ってるんだけど、幸いなことにまだそんな機会はないので、割と出かけるたびに食べ切ってしまっている。腰兵糧仲間の皆さんはどのくらいの量を持ち歩いてるんだろう。いつか見せてほしい笑。
 

❐追記
「これ、湿気ない?」と友達に聞かれたので追記します。
出来上がった豆はシリコンバッグ(そうそう、買ったのです!ツイッターやストーリーで連絡くださった方ありがとうございました)に入れて、珪藻土を入れて保存して数日経過。

うん、ウチ山の中だし多少は湿気た気もするけど(笑)味の良さは同じだし、多少柔らか豆も好きかも、と気づきました。なのであんまり気にしてないです。
カリカリをキープしたい方は食用の乾燥剤とか入れると良いかも。

投稿者プロフィール

柳澤円
柳澤 円(やなぎさわまどか)▷ライター/ 編集/ 翻訳マネジメント。主な執筆分野は食・農・環境問題・暮らし▷10代後半から留学を含む海外生活を続け23歳で帰国。英会話スクールの運営に携わったのち都内のコンサル企業に転職。ナショナルクライアントを担当する充実の日々も2011年3月東日本大震災で価値観が一変し、より自然に近い暮らしへと段階的にシフトする。現在は夫・史樹と共に、横浜から神奈川県内の中山間地へ移り、取材や執筆、編集の傍ら、自家菜園を中心とした自然食と手仕事に勤しむ日々。愛猫の名前はきび。