オゾン層の破壊や地球温暖化のことを初めて「朝日小学生新聞」で読んだ日、未来が怖くなってなかなか寝れなかった記憶があります。今思うと、環境問題を初めて意識した日とでもいうのでしょうか。あのとき何年生だったかは忘れましたが、たぶん10歳くらいかな。

時は経ち、今から23年前。
成田空港の本屋さんで『エコ・ネットワーキング!環境が広げるつなげる、思いと知恵と取り組み』という本が目につき購入。飛行機の中で一気に読みました。

そこには、環境問題がもっとカジュアルで、でも真剣に、しかし楽しくて、それでも効果的に取り組めるものであると示されていて、「そうか、恐れ慄く問題じゃないのか」と気づけたことに、今でも感謝しています。

恥ずかしながらその時は筆者がどんな方なのかまで意識できずにいたのですが、その後で、環境活動家レスター・ブラウンの『エコ経済革命』を翻訳者した、枝廣淳子さんだと知りました。

もはや枝廣さんのご活躍や、著書の数々、あるいは翻訳書の数々はわたしが言わずもがなではありますが、私にとってはこの二冊と、あと『朝2時起きで、なんでもできる』の衝撃で、すっかり枝廣淳子という知性の姿に魅せられたと言えます。

以来、本が出れば買って読み、講演会やセミナーなどで遠くから話を聞き、SNSを覗く。最近のことばで言えば「推し活」していたわたしに、実にありがたいご縁が来たのはライターになって数年経った2018年のこと。

敬愛するライターの大先輩、丸原 孝紀さんからのご縁で、枝廣さんが主宰する読書勉強会のレポート作成をしませんか、とお声がけいただいたのです。

「幸せ経済社会研究所」ウェブサイトより。課題書一覧だけでもものすごい情報量。

枝廣さんの勉強会に参加できて、丸原さんと一緒にレポート作成の経験ができるなんて、心の底から「ライターになって良かった!」と思った瞬間です。

団体名の名の通り「幸せ」か「経済」か「社会」のいずれに関する本を枝廣さんが選書し、みんなで意見交換をはさみながら最新の知見に触れる約2時間。テキパキと進む明快な解説のおかげで、終了後にはなんだか自分まで少し頭が良くなったような気がしてくるほど充実した、楽しい時間です。

そのレポートは、読書会をサポートする東急エージェンシー SDGsプランニングチーム POZIのウェブサイトで順次公開中。最新のレポートは、哲学者・内山節さんの『時間についての十二章』が課題書でした。

東急エージェンシーの叡智が社会課題の解決へと活かされるプロジェクトユニット「POZI」が、読書会をサポートされています。

内山先生は、夫・史樹が数年前から、内山先生の教え子さんたちが主催する勉強会にお邪魔したり、『曹洞禅グラフ』の取材でインタビューさせていただくなどのご縁からの隠れファン(史樹はがっつりファンです)


まさか内山先生の著書を枝廣さんが解説する読書会だなんて、夢のようです。贅沢でありがたい時間。正直もっとたくさん聞いていたい回でした。

とはいえこの課題書、わたしには理解や言語化に難しさを感じることも多い本でした。でも読書会のなかで枝廣さんが「哲学の本が優しく読みやすいのもどうかと思う笑」とおっしゃっていたことに救われました。

また読書会は毎回、参加者同士のディスカッションを短く何度も重ねるのですが、理解がむつかしく言葉に困る参加者に対して「こういう本を読む時は、たとえうまく言葉で表現できずとも、その時その時に感じたまま言葉にして読み進めるのが良い」と促していたことも印象的です。

万人に共通する「時間」という概念を、生きる本質に重ねて解く考察がさすが鋭くて、何度も唸ってしまう内山先生の本。読んだ方とはいつか、意見交換できると嬉しいです。

本書の内容に少しでも興味のある方は、こちらの読書会レポートからぜひどうぞ。

投稿者プロフィール

柳澤円
柳澤 円(やなぎさわまどか)
ライター/コピーライティング/翻訳マネジメント
社会課題と暮らしのつながりを取材し、複数媒体にて執筆。主な関心領域は食・農・環境・ジェンダー・デモクラシー・映画。企業の制作物なども実績多数。
10代からの留学を含む海外生活後、都内のコンサルタント企業でナショナルクライアントの発信を担当。多忙ながら充実の日々は2011年3月に東日本大震災を経験したことで一変、兼ねてより願っていた自然に近い暮らしへと段階的にシフトする。神奈川県内の中山間地へ移り、フリーランスライターを経て2019年、夫・史樹と共に株式会社TwoDoors設立、代表就任。取材執筆のかたわらで自家菜園と季節の手仕事など、環境負荷の少ない暮らしを実践する。書き手として、心の機微に気づく感性でい続けることを願い、愛猫の名はきび。