この2〜3年、快適な食生活にたどり着いた感がある。

数多くのトライアンドエラーを繰り返し、ゆるやかに時間を掛けて変化しつつ、自分も家族も納得して、無理がない食生活。幼少期に与えられた価値観や、現在の住環境など、いろんなファクターによって得た現在地だ。

それも別に「これだ!ついに!」みたいな高まる感情もなく、あくまで冷静。将来的にはまた変化するだろうし、もしかしたらこうしてる間にも少しずつ変化してるのかもしれない。ただ振り返ってみると、いくつか良かった出会いや、今後も大切にしたい確実なことがある。

それが麹だ。

麹の魅力や性質を語ると長くなるし、今はまだうまくまとめる自信もないけど、はっきりと感じることは、麹の存在を自分に合ったかたちで取り入れられるようになったことで、劇的に快適になった。麹を軸にした人生のビフォアー・アフター。

気負う必要もない、崇めるような扱いもしない、ただそこに在る存在を、普段の暮らしに無理なく取り込む。2人家族なのに必要以上につくるとか、特別な道具を買い揃えるとか、誰かみたいにやらなくちゃいけないとか、そういうのも要らない。
そんな頭ではわかっていたことが腹落ちできた。それがじわじわとわたしを喜ばせてくれる。

言うなれば、麹との距離感がつかめた感じか。

蒸したお米に麹菌をつけたものが米麹、麦で作れば麦麹。つくるも買うもよし。麹そのものの味も楽しむ。

麹があるとできることは多い。自分でつくれるものが増えて、質も上がり、味覚に奥行きが持てる。

ウチで麹の出番といえば、断トツ#1は 味噌。続いて塩麹・醤油麹。そして麹甘酒、といったところか。

麹の種類を変えたり、最終的につくりたいものから逆算して欲しい麹を用意するといった、ややマニアな領域を気が済むまで試して、一周してたどり着いたのは結局、こうした日々の食事に役立つラインナップだった。我ながら庶民性の強さに笑ってしまうけど、楽しくておいしくて幸せなのだ、良き良き。

というわけで、現時点でウチで楽しんでるつくりかたがこれ。

だいたいいつも醤油麹は500ml、塩麹は1000mlのガラス容器につくっている

塩麹・醤油麹のつくりかた

塩麹は、麹・塩・水を発酵させた液状の調味料。塩の代わりに使うことで塩分量を抑えつつも、旨味や塩気はしっかりと感じられる。酵素が食材を柔らかくしたり食味を良くするので、もはや「料理中に悩んだら塩麹」で大体オッケーになる逸品。

ちなみに私はお肉を食べないので、筋肉保持のためにササミや胸肉をタンパク質として摂りたい夫は、塩麹や醤油麹にお肉を漬けて冷蔵保存している。酵素のおかげで貯蔵庫みたいに良くもつ上、おいしくもなっているのが嬉しい様子。自分で焼いて食卓に足し、うまいうまいとしみじみ喜んでいる。

夫も自分で仕込んで混ぜ混ぜしてる塩麹。

▶︎うちの塩麹レシオ(割合い)
割と一般的な塩分量で、麹: 塩: 水 =1: 0.35: 1〜1.1くらい。麹に対して塩が35%なので、麹が100gなら塩は35g。水の量に幅があるのは、仕込んだ翌日くらいまではゆっくりと麹が吸水するので足りなく感じたら足す必要があるというだけ。あくまで目視で大丈夫。

▶︎手順
1. 塩と麹を良く混ぜる。両手で包み込み軽くもみ合わせるようにして、麹がしっとりしてくるまでよく合わせる。ココ、けっこう大事なポイントで、軽く済ませるのとしっかり混ぜるのとでは仕上がりのおいしさが違ってくる。
2. 容器に移し、水を加えて、ヘラなどでよく混ぜる。水の量は麹ヒタヒタに。翌日(麹が吸水して)水位が下がってたら水を足す。
3. 毎日かき混ぜて、塩をよく溶かす。5〜6日でいい感じに仕上がる。
▷醤油麹◁
材料も手順もグンと減ってセオリーだけ同じ。用意するのは麹と醤油だけ。容器に麹を入れたらヒタヒタまで醤油を注ぎ、ヘラなどでよく混ぜる。以下、塩麹と同様に混ぜながら5〜6日。

醤油麹は注いで混ぜればOK。

▶︎使い方
基本的に塩/醤油の代わり。隠し味にも。ソースとしても、溶いて出汁みたいにも。漬け床にも。

▶︎おまけ& ポイント & メモ
・毎日ひと舐め味見すると味の変化が感じられて面白い。翌日から3日間くらいはしょっぱさが鋭く、徐々に丸みが出てくる。以降も味の変化に若さとか熟成度があって、このグラデーションに「命」感がある。

・好みに仕上がったら一旦お鍋で火入れすると発酵が止まる。(今ウチはほぼしてないけど)冷蔵保存でも発酵は緩やかになる(これも今はせず常温管理だけど)

・仕上がったらブレンダーをかけると麹の粒々が消えて滑らかなソースになる(これはしたりしなかったり気分次第)


・塩麹を仕込む時に刻んだ何かを一緒に入れると、フレーバリングされる。そのまま料理に使いやすいし、豆腐などにそのまま掛けるソースにもできるし、お湯に溶いてスープやお吸い物がすぐできる。
試してみて便利で常備したくなった好きな順玉ねぎ・にんにく・ねぎ・しいたけ・えのき・トマト・レモン・ビーツ・黒ごま・パクチー・ターメリック・ローズマリー。
試してみたいわかめ・夏みかん・落花生・ルッコラ・大根・にんじん・菊芋・豆類。

インスタを遡ってたらこんな写真もでてきた

・酵素はでんぷんを分解するので、蒸したジャガイモに使うとどんどんジャガイモが溶け出してしまう。スーピーなテクスチャーを楽しむのも良いけど。パスタやチャーハンの場合は火入れするから大丈夫。

・ごはんを炊く時に大さじ1/2くらい入れると、ほんのり塩気のあるごはんが炊けて、そのままおむすびにすれば手塩いらず。

・塩の種類を変えるのも面白い。ブラックソルトは硫黄の香りが残り、灰色の卵というひどいビジュアルになるだけど、サンドイッチに塗って適当な葉野菜とかを挟むのが最高においしい。

長くなっちゃったので、甘酒についてはまた今度にしよう笑。
 
 

投稿者プロフィール

柳澤円
柳澤 円(やなぎさわまどか)
ライター/コピーライティング/翻訳マネジメント
社会課題と暮らしのつながりを取材し、複数媒体にて執筆。主な関心領域は食・農・環境・ジェンダー・デモクラシー・映画。企業の制作物なども実績多数。
10代からの留学を含む海外生活後、都内のコンサルタント企業でナショナルクライアントの発信を担当。多忙ながら充実の日々は2011年3月に東日本大震災を経験したことで一変、兼ねてより願っていた自然に近い暮らしへと段階的にシフトする。神奈川県内の中山間地へ移り、フリーランスライターを経て2019年、夫・史樹と共に株式会社TwoDoors設立、代表就任。取材執筆のかたわらで自家菜園と季節の手仕事など、環境負荷の少ない暮らしを実践する。書き手として、心の機微に気づく感性でい続けることを願い、愛猫の名はきび。