扉を選ぶ。社名にまつわるあれこれ。

私たちの社名はTwo Doors(トゥードアーズ)。意味としては2つのドアなんだけど、ときどき由来としてどういう意味かと聞かれることがある。

ひとつの言葉に複数の意味が含まれる言葉あそびが好きなので、社名にもいくつかの意味を含めた。

まず大きくは、私たちは日々何かを選択しながら生きていることのメタファー。起きる時間、着る服、行き先、仕事など、誰でも毎日すごい数の選択を重ねて暮らし、それらはすべて自分で選ぶ。良くも悪くも自らの選択を歩むのが人生だ。

それはもう人間の定めでもあって、英語でも確か When one door shuts, another one opens. という言葉を昔だれかに習った記憶がある。(これは「捨てる神あれば拾う神あり」に近いと思う)

どの扉にも不正解はなく、わたしたちは基本的にどんな選択も自由に選ぶ権利があって、それがきちんと守られる社会であってほしいという願いも込めた。

しかし私たちはなぜか、自由に生きていいことを簡単に忘れがちだ。「こうありたい」と願って努めるあまり、いつの間にか「こうしなくては」という理想像に縛られてしまい、自ら自分の歩幅を狭め、息苦しくなった経験はないだろうか。

自慢じゃないが私はわりとある。

目標に向かってガーーッと突き進むうちにゼーゼーと息切れして、ハッ!なぜか苦しい!と気づき、いやいや、私はチルに生きたいはずだったよね!と思い出したようにスローダウンする。そんなことを過去に何度か経験していたのだが、ちょうど社名を考えるときは、ある人がそれを思い出させてくれた。

A woman who is a wonderful, kind, extraordinary person who I’m so proud to call a cherished friend of mine.

彼女は夫の同級生の奥さんで、私たちが知り合った頃すでに彼らの友情は20年近かった。私たちが一緒に住む部屋を探し始めたというと「ウチの隣が空くよ!」と提案してくれたのが彼女だ。

友達夫婦の隣人になるなんて最高じゃないか!彼らの部屋には前から遊びに行っていたし、他の友達もたびたび集う部屋だし、何かにつけてこんなに心強いことはない。私たちは他の物件を探すこともせず彼らの隣人となった。

5歩で着く友人の家では、よく一緒に音楽や映画を楽しんだ。本もよく交換したし、写真を撮って、ヨガをして、おいしいものを食べて、たくさん話して、泣くほど笑って。今思うと時間がいっぱいあったな、あの頃は。大晦日にお参りに行き一晩中食べ続けながら新年を迎える慣習もあった。

唯一無二とは彼女のことだろうな、と思う。愛し愛されてた人だが「地球はもう飽きたからお先にね」と言わんばかりに、みんなを残して次のステージに行ってしまった。

彼女がいない地球は薄いベールが掛かったみたいな色に変わってしまったんだけど、今でも、昔よくおしゃべりしたあの玄関前の光景を思い出す。2つ並んだそれぞれのドアの前で、私たちはお互い家事をしたり、夕涼みしたり、彼女の愛猫と遊んだり。
いつも私の可能性を心から信じて応援してくれる人で、私を励ます天才だった彼女には仕事の愚痴も聞いてもらったりした。

社名を考えるとき、私と夫のはじまりともいえるあの部屋を思い出して、あの2つのドアと、2人の会社が脳内で重なった。
友達夫婦の隣人だった次は、2つの部屋を内側の壁を抜いて繋ぎ玄関が2つある部屋にも何年か住んだ 。(本当に最高の部屋だったね、今でもあの部屋が世界で一番好きだよ)
2人でやっと一人前のような未熟な私たちだが、2人揃えば power of twoでもある。社名に他の候補はなく即決だった。

そんな話をだらだらと聞いてくれたのは、手描きのタッチが愛らしいアーティストで大切な友人のさくらこちゃん。そしてこんなにかわいいロゴをクリエイトしてくれた。

おなじく友人でデザイナーのMちゃんに依頼して、人と社会をまぁるく繋ぎたい思いをデザインしてもらった。こちらも控えめに言ってめちゃくちゃ気に入っている。
また、環境活動家のはしくれとして紙の消費を極力抑えて暮らしていた私たちだが、エコなリソースである100%竹製の紙に印刷オーダーしたお話はこちらで記事として紹介させてもらった。

ちなみに私はこのロゴが大好きすぎて、透明白インクのステッカーをつくり、あらゆる持ち物に貼っている。

多分これからもグッズやらTシャツや何かつくって楽しむかもしれない。ノリは文化祭のクラスTに近いが、スタートアップが社名のTシャツつくって着まくるなんて当たり前だから気にしないでやる。
それと、強く思い立ち、18年ぶりにインクも入れた。

というわけでTwo Doorsという社名のドアには、私たちの決意と、自由性と、尊厳と、愛が込められている。それを絶えず自分の腕の上で示せていることは喜びでしかない。

人はどんなに快適な場所からもいつかは何らかの形でドアを開けて旅立つもの。いまこうして生きていることを実感して、自由であっていいことを思い出したら、自分たちが持つスキルで人の役に立ち、社会貢献したい欲が高まった。簡単にいえば今わたしたちは日々生きることに夢中だ。

毎日、今日も生き切ったと実感しながら眠りにつき、さぁ今日はどんな日になるだろうかと楽しみに起きあがる。

私たちは毎日、新しいドアを開けている。

(気まぐれで書き始めたインスタ英語でも同じようなことを書いた)

投稿者プロフィール

柳澤円
柳澤 円(やなぎさわまどか)
ライター/コピーライティング/翻訳マネジメント
社会課題と暮らしのつながりを取材し、複数媒体にて執筆。主な関心領域は食・農・環境・ジェンダー・デモクラシー・映画。企業の制作物なども実績多数。
10代からの留学を含む海外生活後、都内のコンサルタント企業でナショナルクライアントの発信を担当。多忙ながら充実の日々は2011年3月に東日本大震災を経験したことで一変、兼ねてより願っていた自然に近い暮らしへと段階的にシフトする。神奈川県内の中山間地へ移り、フリーランスライターを経て2019年、夫・史樹と共に株式会社TwoDoors設立、代表就任。取材執筆のかたわらで自家菜園と季節の手仕事など、環境負荷の少ない暮らしを実践する。書き手として、心の機微に気づく感性でい続けることを願い、愛猫の名はきび。

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2 Comments

  1. お邪魔させてもらえて光栄です💕