食べることも料理も大好き。好きな食べ物も挙げきれないほどあるが、高校時代から実家を離れてることもあり「母の味」はやっぱり特別。
特にウチの場合、20年前に母が新潟・佐渡に移住し、食卓を一緒にする機会が年に数えるくらいしかないのもまた、特別感を手助けしている。

今日は、ちょっと思い立って、そんな母の味を郵送したことを綴ります。

一部。ポスト投函するには多すぎて車で郵便局へ。

わたしが生まれる前から、手先の器用さを活かして「ハンドクラフト作家」を続けてきた母は、料理も基礎を守りつつ創作しちゃう傾向があり、特に佐渡で米農家となってからは、身近に恵まれた素晴らしい資源をめいっぱい楽しんでいる。

なかでも不思議なほど本気の情熱で取り組むのが、「干し柿」「おかき」づくりだ。

いつぞやのインスタ投稿。佐渡の食は本当に何から何までおいしい。

「干し柿」も彼女なりのセオリーで時間と手間を掛けて、ちょっと引くほど大量に作ってるが、更に「おかき」はもう、自分で「米農家が本気で作ってんだからね」とか言っちゃうくらいのマジモード。

はたから見てると、おかきに真剣なシニア夫婦の姿はちょっと面白くも愛おしくもあるんだけど、実はおかき作りの工程は干し柿のそれを軽く超えるほど果てしない。なんせまず、もち米を育てるところから始まるし笑、1年掛けて無事に収穫したもち米を炊いて、ついてお餅にして、ここで好きな具材を練りこんで、のして、乾かして、薄く切って、さらに全部を日干しにし、カチカチに乾燥させて、やっと完成する。それを油で揚げたものが一般的な「おかき」だ。

母たちはそのおかきを家族や親戚に送り、自分たちも年間掛けて軽食やおやつとして食す。なんでそんなに真剣につくるの?と聞いても毎回「わからない笑」って言われるんだけど、やっと最近わかってきたは、たぶん、そこに暮らす人にとっての季節仕事である、ということ。理由なんてなく、どうやら、毎年繰り返してきた生き方のひとつ、ただそれだけのことのようだ。

もちろんこんなことしてないお米農家さんの方が多いし、おかきだって一般的には工業化されてるのでこんな手間は誰も掛けてないけど、でも、私はこの工程を知って以来、スーパーマーケットで売られてるおかきですら見る目が変わった。そして母の味といえば「干し柿」と「おかき」だと思うようになった。(他にもたくさんあるけど)

昨年はこのおかきを、母たちのお米「龍泉米」を年間購入してくださってる方にご連絡し、ご希望者へ着払いで送らせてもらっていたのだけど、今年は希望を取らずに、わたしたちから贈らせてもらうことにした。

梱包中。

なんせ今は、新型ウィルス、そして、そこに伴う不安が充満し、私たち自身、何かしなければ落ち着かない気持ちになっている。
もちろん頭ではわかっているのだ。大切なことは、情報に冷静に向き合い、横のつながりを保ち、自分たちの中にある生きる力を信じること。でもちょっと気持ちが落ち着かないのも事実なので、少しでも自分たちにできることをしたい、と思ったとき、まずは、みんなの家庭で、我が母の味を楽しんでもらいたい、と思い立った。

さらにもう少し手元に残ったので、個人的なお友達にも少しずつ送ることにした。茶色い箱でガサガサ音がする郵便物が私の名前で届いた方は、以下を参考に、どうぞ、映画や読書のお供として楽しんでください。

(限られた数しか送れなかったので、今回お届けできなかった方はいつかの機会に一緒に食べましょう)

まず、おかきの元の姿はこんな感じ↑です。
その前の、のしたお餅のときはこんな↓姿。

のしたお餅をスライスするおかき。お餅の厚み=おかきの横幅になる。

ちなみに母たちいわく、おかきづくりの本気ポイントは2つあって、一つは農家の意地とも言えるお米の「味」、そしてもうひとつはこの「薄さ」だそうで、ぜひ手にとって「へー、乾燥した餅をこの薄さに切るのってむづかしいんだー」と思ってもらえたらOKです笑。

伝わりにくいこだわりポイント。

調理前のおかきは、言ってみれば「お餅の乾物」なのでカチカチに硬いです。ただ、火を入れると大きく膨らむので、私はいつも割ってから調理していて、おそらく配送中に割れてるのもあるかと思うのですが、小さくなった破片もぜひよかったらお楽しみください。

割れても大丈夫というか、割って調理することも多いくらい膨らむ。

お餅に練り込むフレーバリングは、母いわく「今年の新作」3種類を含む、全7種類。たくさん素材を用意するのは大変じゃないのかしらと想像するんだけど、「色んな色があると楽しいじゃない?」とか言って毎年だいたい6〜8種類は作っている。

が、しかし…あまりにおかきが完成するまでの工程が長いせいなのか、完成時には全種類がランダムにミックスされるのも毎年の通例となっており、皆さんのお手元にどれが何種類入っているかは、開けるまでのミステリーになっています笑。どうぞご笑納いただき、これはこれかな?いやこっちかな?と楽しんでください。

これを熱した油で揚げるとじわじわと膨らみ、サクサクのおかきになります。軽くお塩をふったり、ササッと醤油をかけたり、パパッとカレー粉やハーブをするなどお好きに召しがってください。

揚げたてはそれはそれは最高ですが、湿気に気をつけておくと数日間おいしさが保たれます。わたしは出張や移動のお供に持ち歩くことも割と多いです。

油で揚げるのはめんどくさいなぁ、って時もあると思うのですが、そんなときは、オーブンか、トースターでもできます。膨らみ方やサクサク度は揚げにかないませんが、香ばしくパリパリして、我が家では「これはこれで好き」と話していて、キッチンで揚げものする時間のない時や、油の量を抑えたいときはこちらもおすすめ。

コツは、ボウルの中でオイルとていねいにまぜ合わせたり、ハケを使うなどして、満遍なくオイルをコーティングさせることです。

こちらはオーブン。満遍なくオイルをまぶしたら鉄板に広げて、180度で20分。塩を振って鉄板をガサガサした後なので絵的に荒れてますが。
こちらは上の7種類と同じものをトースターで。同じくオイルコーティング後、網の上で7〜8分。焦げやすいので5分くらいでチェックしてもいいかも。

少ない量ですが、自宅で過ごす時間が少しでも有意義で楽しく、そして「おいしいね」と笑顔あふれる時間でありますように。そう願って送りましたので、自由に楽しんでもらえたら嬉しいです。

もしよかったら感想などもお聞かせいただけたら、母たちの来年の本気が更に加速するかもしれないので、ぜひ、よろしくお願いします。

(左)桜の塩漬けを刻んで合えたり、(右)お醤油の絞り粕をフレークにして合えるなども。

投稿者プロフィール

柳澤円
柳澤 円(やなぎさわまどか)
ライター/コピーライティング/翻訳マネジメント
社会課題と暮らしのつながりを取材し、複数媒体にて執筆。主な関心領域は食・農・環境・ジェンダー・デモクラシー・映画。企業の制作物なども実績多数。
10代からの留学を含む海外生活後、都内のコンサルタント企業でナショナルクライアントの発信を担当。多忙ながら充実の日々は2011年3月に東日本大震災を経験したことで一変、兼ねてより願っていた自然に近い暮らしへと段階的にシフトする。神奈川県内の中山間地へ移り、フリーランスライターを経て2019年、夫・史樹と共に株式会社TwoDoors設立、代表就任。取材執筆のかたわらで自家菜園と季節の手仕事など、環境負荷の少ない暮らしを実践する。書き手として、心の機微に気づく感性でい続けることを願い、愛猫の名はきび。