2011年3月11日。あの日から丸9年が経過し、10年目を迎えた。

あの日東京駅で地震に出会った私は、テレビに映る東北の様子もよく知らないまま、横浜の自宅まで8時間をかけて歩いた。
首都圏の被害は、東北のそれに比べれば、ほぼ皆無だったと言っていい。
津波によって絨毯爆撃を受けたように壊滅していく東北沿岸の各地や、世界史上最悪レベルの原発事故が起きている最中、膨大な数の帰宅難民が歩く通り沿いでは、飲食店はおろか、パチンコ屋までやっていて、たくさんの客がいた。

私の自分史上、最大のターニングポイントとなったあの日から、私は自分のいのちに向き合い、なにも分からないなか、無我夢中で「生きること」に取り組みはじめた。

震災支援イベントでサンマを焼き、岩手大槌の避難所に友人のミュージシャンと音楽を届け、福島南相馬の小学校に桜の木を植樹し、原発事故の現実を知るイベントを主催し、埼玉の避難所に避難したお年寄りにおせちを作り。もはやすべてを思い出せない。

再就職したばかりの仕事を半年で辞め、フリーランスになり、生活を変えようと畑を教わり始め、相模原に移住し、自分史に取り組み始めた。
その間に両親、そして親友が黄泉の国へ旅立っていった。

そして9年が経過した10年目の今日、私はこうして生きている。
思い返せば返すほど、よくなんとか人並みに生きてこれたなと思う。
もちろん一人じゃなく、いろんな人達の助けがあったからこそなんだけど。
 
そんなことを考えつつ、この日にふさわしい思いを自分史に刻みたいと考えていたら、小学校のときに聞いて以来、幾度となく読んできた谷川俊太郎さんの詩「生きる」があたまに浮かんできた。

生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木漏れ日がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
くしゃみすること
あなたと手をつなぐこと
生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと
生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ
生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ
いまいまがすぎてゆくこと
生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ

谷川俊太郎 生きる(日本傑作絵本シリーズ)

しかしこのストーリーには、さらに続きがあった。
この詩を検索している最中、埼玉の和光中学校が、この詩を授業で読み、それぞれの生徒さんに自分なりの「生きる」を作ってもらうという授業の記事が目に入った。

10年目の今日、13歳の子どもたちの新しい「生きる」に初めて出会い、生きていることへの感謝が胸のなかにさらにじんわりと広がった。
それをみなさんと共有することを、私の自分史として刻み、新たな1日を歩きはじめたいと思う。

生きているということ
いま生きているということ
それはいつでも温度を感じているということ
それは感情を出せない時もあるということ
それはいつも隣にいる人がいなくなってしまう恐怖といつも隣り合わせでいること
それはどうなるか最後までわからないということ
(1年 女子)


生きているということ
いま生きているということ
それは血が出ること
時間がなくなること
将来の君たちがいること
可能性があること
背が伸びること
命をとること
命をとられること
感情があること
失敗をできること(1年 男子)

生きているということ
いま生きているということ
それはおいしい食べ物を味わうということ
友達と楽しく笑うこと
鳥のさえずりに耳を傾け
また一歩ゆっくり進むということ
楽しいことを思いっきり楽しむということ
新しいものに出会う旅(1年 男子)

生きているということ
いま生きているということ
それは小さな世界をつくれること
美しいものに触れるということ
パソコンに向き合うということ
物語の続きを探すということ
色々な世界を見るということ
そしてなにより
この詩をわかってくれる人がいて欲しいと願うということ(1年 女子)

1年生 国語 谷川俊太郎「生きる」

生きよう。
9年前のあの日にいのちの時間を止められてしまった人たちの分も、何がなんでも生きぬいてやろう。
私たちが生まれたことも奇跡、出会ったことも奇跡、いまこうして生きていることも奇跡なんだから。










投稿者プロフィール

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柳澤史樹
株式会社 Two Doors 代表社員。
一般社団法人 自分史活用推進協議会認定 自分史活用アドバイザー。
企業研修プログラム「マインドフルカフェ」メンバー。
ライター・編集・プランナーとしても活動中。