山間部の住宅街に引越して、丸3年が過ぎた。

早い、早すぎる。早すぎて、この家は全くもって借りた時のまま、全然自分たちらしく変えることが追いついていない。今年こそ、少しずつ手を入れねば。(賃貸だけど)

ハード面はそんなスローペースだが、わたし自身のソフト面はあっという間に環境に溶けこんだ。今のところ、過去の住まいに比べて、周囲に人の数が少ない、雑音が少ない、空気が澄んでる、土の上、といった住居環境は、最寄駅の遠さや周辺の不便さに勝ると感じている。

何よりもココに住んで一番好きなのは、季節の色がはっきり感じられることだ。

今の家に住み始めた時、季節は冬で、山の木々は枯れ、いろんな茶色に染まり、少し積もった雪の白さと混ざった庭の色を覚えている。やがて春に向かうにつれ、あちこちで黄色い花が目立ち始める。続いて梅や桜の清楚さと、山肌の鮮やか新緑のグラデーションは言葉にならない感動の美しさだ(この時期に遊びに来た人はみんな「住みたい」と言い出す)だんだん暑くなりはじめると、濃い緑と、初夏のアジサイが海を思うようなブルーを魅せ、各々の畑ではエネルギーに満ちた夏野菜が弾けんばかりの原色を発する。少しずつ勢いを抑えながら秋になると、下の方からだんだん紅く染まる山に風情を感じ、こうして季節は刹那的なループを辿る。

去年の初夏。庭や周囲から少しだけ自然の風情を家の中に持ち込む。

どの季節が好きかなんて決められない。自然はいつでも美しいし、事実、家の中は横浜に住んでいた時よりも確実に色が増えた。

特に、この2月頃から少しずつ見掛けはじめる黄色いお花には相当テンションがあがる。冬の寒さが厳しいせいだろうか、”元気をもらう”とはまさに言葉の通りだ。
もはや2月に入るとわたしの意識のほとんどは、映画ファンとしてアカデミー賞の行方がどうなるかと、ミモザをどこで手に入れるか、ほぼこの2つに向けられる。

いつもガーベラを買ってくれる夫もこの季節はミモザに。

ミモザが咲きすぎて困ってる方がいたら喜んでもらってきたり、出掛けた先のお花屋さんで買ったりしながら、せっせと家の中のミモザ率を上げるのが2〜3月の過ごし方になった。贈ったり贈られたりしながら、黄色を求め続けるのが春の始まりのサインだ。

リースやスワッグにしながらドライになっていく様も好き。

それからなんといっても、菜の花。

元祖エディブルフラワーは、かわいい上においしくて大好き。お店で買う他、農家さんにいただいたら1日くらいは活けて愛でてから食べる。また、家庭菜園でも野良ぼう菜などアブラナ科の野菜を畑に残しておくのは、菜の花が楽しみだからでもある。ルッコラや春菊のお花もかわいい。

Google photoで「黄色」と検索したら出てきた、去年お花見につくったミニ蕎麦いなり。口を留めるのに菜の花で刺す仕様。

いかん、いかん、こうして季節の色と味わいにうっとりしてると、また今年も家のDIYをしそこねてしまうので、しっかりプランしなくては。今年こそ、庭に黄色のモッコウバラか山吹を植えたい。ミモザと菜の花に続いて、元気をくれる黄色の花たちを。

たぶん外苑前あたりのビル。なんて花だろう。今の家にいつまで住むかは未知数だけど、こんな外観が作れたら(手入れに相当コミットいるともうけど)最高だよね。
 

3年前から、わたしの春は黄色からはじまることになった。黄色の春を年々レベルアップさせていきたい。
 


 

投稿者プロフィール

柳澤円
柳澤 円(やなぎさわまどか)
ライター/コピーライティング/翻訳マネジメント
社会課題と暮らしのつながりを取材し、複数媒体にて執筆。主な関心領域は食・農・環境・ジェンダー・デモクラシー・映画。企業の制作物なども実績多数。
10代からの留学を含む海外生活後、都内のコンサルタント企業でナショナルクライアントの発信を担当。多忙ながら充実の日々は2011年3月に東日本大震災を経験したことで一変、兼ねてより願っていた自然に近い暮らしへと段階的にシフトする。神奈川県内の中山間地へ移り、フリーランスライターを経て2019年、夫・史樹と共に株式会社TwoDoors設立、代表就任。取材執筆のかたわらで自家菜園と季節の手仕事など、環境負荷の少ない暮らしを実践する。書き手として、心の機微に気づく感性でい続けることを願い、愛猫の名はきび。